[number-0000004] 作品名:忍愛 – シノビアイ – サイズ:F20 価格:¥760,000

CONTENTS

作品イメージ

画像をタップすると、写真を拡大する事が出来ます。

作品の世界観

作品名:忍愛 -シノビアイ-

作者:MADARA

「忍愛(しのびあい)」は、愛と忍がひとつの呼吸の中に共存する、祈りの書である。
白いキャンバスの上に、まず描かれたのは「愛」。それは白のアクリルで描かれ、光の中に溶け込み、ほとんど姿を見せない。見えない「愛」は、しかし確かにそこに存在しており、作品全体の基盤となって息づいている。愛は語らず、ただ包む。その静けさは、命の根のように深く、やがて訪れる黒の「忍」を受け止めるための大地となる。

その白の層の上に、黒の墨で「忍」が書かれる。
墨は一発書きの筆跡術によって生まれ、筆先が触れる瞬間にすべての意志と祈りが流れ込む。
その線は揺らぎ、震え、呼吸する。
黒の筆致は単なる形ではなく、心の波動そのものだ。愛の上に忍があるという構造は、「愛があるからこそ耐えられる」「忍があるからこそ愛が続く」という、人の存在の根本を映している。白と黒の交わりの中に、愛と忍の循環が描かれる。

「忍愛」という言葉は、二つの相反する感情の統合を意味する。
愛は広がり、忍は内に秘める。
愛は与える力であり、忍は受け止める力。
この二つがひとつになったとき、人は本当の意味で「生きることの美しさ」を知る。
この作品には、そうした心の営みが静かに息づいている。
白いアクリルで描かれた愛は、とても見えづらいが、光が射す角度によってわずかに姿を現す。
それはまるで、日常の中でふと感じる「誰かの想い」や「祈りの気配」のようである。
見えないからこそ、存在は深く、真実である。

一方で、黒の「忍」はその見えない愛を背景に立ち上がる。
力強く、しかし静かに。
墨の濃淡や筆圧の呼吸には、MADARAが筆跡術を通して伝えようとする「心の鼓動」が宿っている。
筆を通じて流れ出すその瞬間、書はもはや文字ではなく、生命そのものとなる。
「忍」は耐えることではなく、受け入れること。
「愛」は求めることではなく、包むこと。
この二つの在り方を同時に描くことで、「忍愛」は愛と忍の間にある祈りの空間を顕現させている。

白と黒は、陰と陽のように対立しながらも、互いを必要とする。
白がなければ黒は際立たず、黒がなければ白の意味も生まれない。
それは人間の感情そのものでもある。
愛の中には痛みがあり、忍の中には温もりがある。
この作品では、その両極が絶妙な呼吸の中で共存している。
愛が溢れ、忍がそれを支える。
それは「生きる」という行為の中で誰もが経験する、静かな戦いであり、やがて祈りへと昇華される。

キャンバスの上に描かれた白と黒の重なりは、まるで「見えない光」と「見える影」の交差点のようだ。
その境界にこそ、MADARAの書道の真髄があり、筆跡術により深い意味がもたらされている。
MADARAが筆を取るとき、そこには迷いがない。
一瞬の筆運びに、全ての生命と意志が込められる。
それは祈りであり、同時に挑戦でもある。
筆が止まることなく流れるその姿は、まさに呼吸そのものだ。
白と黒のあいだで、愛と忍が交わり、響き合い、そして静寂へと還っていく。

「忍愛」は、愛を描いた作品であると同時に、忍を描いた作品でもある。
そして、どちらか一方ではなく、両方が存在するからこそ、この世界が成り立っているという真理を示している。
白の愛がなければ、忍はただの孤独で終わる。
忍がなければ、愛は形を失って流れ去る。
両者がひとつになるとき、そこに初めて「人間の祈り」が生まれる。

この作品を前にしたとき、見る者の心に浮かぶのは、言葉ではなく感覚だろう。
それは静けさの中に宿る光、あるいは闇に溶け込む優しさのようなもの。
見る角度、光の加減、距離によって印象は変わる。
まるで「愛の見え方」そのものが、見る人の心の状態を映す鏡のようである。

「忍愛」は、MADARAが描く筆跡術の新たな到達点である。
愛と忍という二つの文字の間に、祈りの呼吸が生まれる。
それは人の内にある「見えない光」と「見える影」の融合であり、
書を通じて魂が語る、愛のかたちである。

制作秘話

作品「忍愛」 制作するにあたり

話:MADARA

私はこれまで、何度も筆を握り、何度もそれを置いてきた。
書とは生きることそのものであり、時に苦しみと同義でもあった。
「忍愛(しのびあい)」を描くことを決めたのは、ただの創作ではなく、
私自身の「祈り」をもう一度形にしたいという想いからだった。

白いキャンバスを前にしたとき、私は迷わなかった。
まず「愛」を描こうと思った。
けれどその愛は、誰の目にも見えないほど淡く、静かで、確かなものにしたかった。
私は白のアクリルを取り、白いキャンバスの上に白の「愛」を描いた。
それは、私の人生において、言葉にできなかった感情、
失ったもの、そして支えてくれた人々への感謝のすべてを、
「見えない愛」として封じ込める行為だった。

東日本大震災で、多くの大切な人を失った。
それ以来、愛という言葉は、私にとってあまりにも重く、扱うのが難しいものになっていた。
しかし同時に、あの絶望の中で私を生かし続けてくれたのも、愛だった。
見えないけれど、確かに存在する。
この作品の白い「愛」は、そんな私の中の祈りの象徴でもある。

白を描き終えたあと、私はしばらく筆を置いた。
その静けさの中に、心の奥から浮かび上がってきたのが「忍」という文字だった。
忍ぶということは、耐えることではない。
悲しみを抱えながら、それでも前へ進むこと。
怒りや苦悩を押し込めるのではなく、それを受け入れて、自らの糧に変えていくこと。
その意味で、「忍」は私の人生そのものだった。

私は墨を磨り、ゆっくりと筆をとった。
白い愛の上に黒い忍を書くとき、
筆が紙に触れる音が心臓の鼓動のように響いた。
一発書きで描く筆跡術。
迷いを許さないこの技法は、書き手の生き方そのものを映す。
筆が震えれば、それもまた心の震えとして残る。
私はその一瞬に、自分の五十年余りのすべてを込めた。
震災、喪失、再生、そして愛。
すべてが「忍」という一文字に集約されていった。

「忍愛」という言葉は、書き終えてから生まれた。
愛の上に忍があり、忍の中に愛がある。
互いに支え合い、存在を成り立たせる。
それは私自身が、長い年月の中で辿ってきた心の形そのものだった。
愛だけでは生きられない。
忍だけでも心は枯れてしまう。
この二つがひとつになったとき、人はようやく自分を赦し、
他者を思いやることができるのではないかそう感じた。

作品を描いている途中、
筆先に宿る「呼吸」がまるで誰かの声のように感じられた。
失った人たちが、「それでいい」と囁いてくれているようだった。
私はその声に導かれるように、筆を走らせた。
黒が白を侵食するのではなく、白の中に生きている。
愛と忍が溶け合い、境界が消えていく。
それはまるで、過去と現在が融け合い、新しい命が生まれる瞬間のようだった。

書を描き終えたとき、私は深く息を吐いた。
筆を置いた指先が震えていた。
しかしその震えは、悲しみではなく、安堵だった。
ようやく「書くこと」が「祈ること」に戻った気がした。

「忍愛」は、私の中で特別な位置を持つ作品である。
それは単に愛を描いたものでも、忍を描いたものでもない。
見えない愛と、見える忍の呼吸が交差する一点に、
人が生きる意味を見出すための「道」がある。
それをこの作品で伝えたかった。

今、私はこの作品を通して海外へも発信している。
この文字の中に込めた祈りが、国を越え、言葉を越え、
誰かの心に静かに届くことを願っている。
愛と忍、それは日本だけの美徳ではなく、
人間が生きるうえで、誰もが持つ光と影の一部だと思う。

筆跡術は、未来を導くための技である。
書とは運を描くことであり、生命を描くことである。
そして「忍愛」は、私自身の運命をもう一度描き直すための一枚だった。
この作品を書き終えたとき、
私はようやく「過去を受け入れ、未来を愛する」ことができると感じた。

この作品は、私にとっての再生であり、
そして「愛に生かされた人生」への感謝の書である。

漢字の意味

「忍」― しのぶ(Shinobu)

【字形の成り立ち】

「忍」という漢字は、「刃(やいば)」と「心(こころ)」から成り立っています。
上の「刃」は鋭い刃物を意味し、下の「心」は人の心を表します。
つまり「刃のような痛みを心に抱く」ことが「忍」という字の原意です。
耐える、こらえる、静かに受け入れるという行為の根底には、この「痛みを知る心」があります。

【意味】

・耐える(to endure)
・こらえる(to restrain)
・静かに保つ(to persevere in silence)
・隠して思う(to harbor feelings quietly)

書道的に見ると、「忍」は内なる力の象徴です。
表に出すのではなく、心の奥に宿る「強さ」を描く文字です。
この文字を筆で書くとき、最も重要なのは「止め」と「払い」の呼吸。
そこに、耐える者の静かな決意が宿ります。

【精神的象徴】

「忍」は、ただ我慢することではなく、
「痛みや悲しみを抱えながらも、なお優しさを失わない心」
を意味します。
真の忍耐は硬さではなく、柔らかさの中にあります。
これは、禅の「柔弱は剛強に勝つ」という思想にも通じます。

「愛」― あい(Ai)

【字形の成り立ち】

「愛」という字は、古代の字形では「心」「手」「受」「夂(あし)」などの要素が含まれており、
「心を寄せ、手を差し伸べ、歩み寄る」という動作を表します。
つまり、「愛」とは本来「動く心」であり、「相手へ向かう行為」なのです。

【意味】

・慈しみ(compassion)
・思いやり(affection)
・絆(bond)
・命を包む力(the power to embrace life)

日本語の「愛」は、単なる恋愛や感情ではなく、
「他者を思い、見返りを求めずに寄り添う心」を意味します。
静けさの中に温もりを持つ、深い情の表現です。

【精神的象徴】

「愛」は、「生命をつなぐ力」「祈り」「赦し」「受容」の象徴です。
仏教では「慈悲(じひ)」、キリスト教では「Agape(無償の愛)」に近い概念でもあり、
すべての文化に共通する「光の感情」といえます。

書としての「愛」は、線の太さや緩急に生命感が宿りやすい字です。
強く書けば情熱に、柔らかく書けば慈愛に変化します。
私が白で描いた「愛」は、見えない愛、つまり「存在の根」に近い「無償の愛」です。


「忍」と「愛」の関係 ― 二つの呼吸

「忍」は「心を守るための刃」
「愛」は「心をひらくための光」
この二つは相反するようでいて、実は表裏一体です。

忍は愛を支える力であり、愛は忍を癒す光。
「忍愛」は、この二つの気が溶け合う瞬間
「静けさの中に燃える炎」や「痛みの中にある温もり」を描く文字世界です。

作品詳細

項目内容
作品ベースウッドキャンパス
メイン素材木材、和紙
サイズF20 28.6in(727mm) × 23.8in(606mm)×0.98in(25mm)
使用画材墨汁、アクリル絵の具
作品の仕上げ木製キャンパスの上に、和紙(書道用紙)を貼り、アクリル絵の具の白色と、墨汁の混合で仕上げています。
国内外配送対応について・海外出荷対応可能:運送会社に指定が無ければFedExにて出荷
・日本国内の配送:運送会社に指定が無ければヤマト運輸にて出荷
出荷時の梱包について簡易包装や重包装など、ご要望に応じた梱包も対応させていただきますので、詳しくはお問い合わせください。
送料についてアート作品対応運輸を使う、保険をかけるなど、購入者と要相談のうえ決定します。
作品の補償について作品は、販売時の状態そのままでのお引き渡しとなります。美術品保険等のご希望がありましたら、ご相談も承ります。
お支払の方法作品価格+保険料(オプション)+送料が、お支払価格となります。お支払はカード決済がご利用いただけます。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
CONTENTS