[number-0000010] 作品名:祈 – 湘南平塚の海にて – サイズ:F30 価格:¥480,000

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作品イメージ

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作品の世界観

作者:MADARA

「祈 – 湘南平塚の海にて」は、自然の静寂と人の内なる祈りが交わる瞬間を写し取った作品である。
この文字に込めたのは、願いや祈願といった目的ではなく、存在そのものから生まれる「生の祈り」である。
夜明け前の冷たい空気が少しずつ光を帯び、世界がまだ眠っているその間に、海は淡く揺れながら光を迎える準備をしている。
風はなく、波も穏やかで、ただ遠くで鳥の声がかすかに響いていた。
筆を持った瞬間、すべての音が遠のき、空と海と身体が同じ呼吸をしているような感覚に包まれた。

「祈」という字は、偏(へん)の「示」が天とつながる象徴であり、旁(つくり)の「斤」は人の手を意味する。
その構造の中に、人が天と地の間で生き、願いを託し、存在そのものを捧げる姿がある。
この作品では、筆の重なりをできるだけ少なくし、墨の流れに自然の律動を託した。
黒の中に光があり、光の中に静けさがある。
朝日が墨に映り込むと、濡れた和紙の表面が金のように輝き、その瞬間、書はただの線ではなく「光の記録」となった。

この「祈」は、信仰や宗教を超えて、人が何かを想い、願い、感謝する心そのものを表している。
それは世界共通の原点であり、言葉にできないほど静かで確かなものだ。
この作品が見る人の心に、言葉のない祈りを思い出させるきっかけとなることを願っている。

制作秘話

この作品を制作した日は、まだ真っ暗な午前3時に起きた。
支度を整え、道具を車に積み込み、平塚の海へ向かった。
外は冷え込み、車の窓に小さな水滴がついていた。
出発の時点では富士山は雲に隠れており、空全体が灰色の様に暗い灰色のようにぼやけていた。
「今日は見えないかもしれない」と思いながらも、何となく心の中で“行かなければならない”という感覚があった。

5時半ごろ海に着くと、まだ薄暗く、水平線の向こうが少しずつ明るくなり始めていた。
西の空を見上げると、富士山の輪郭がうっすらと現れているのが分かった。
ただ、その上には雲がかかっており、撮影をするか迷った。
それでも準備を進めているうちに、東の空が赤紫に染まり始めた。
太陽が昇ると、雲が一気に消え、空気が透き通るように澄んでいった。

その瞬間、延期の迷いが消えた。
砂浜に和紙を貼ったキャンバスを固定し、筆に墨を含ませた。
風はなく、海面は鏡のように静かだった。
一筆目を入れたとき、墨が紙に吸い込まれ、光を帯びたように見えた。
朝日が差し込み、濡れた墨が反射し、黒が金色に変わる瞬間があった。
そのわずかな光の揺らめきに、自然と心が静まり返った。

書き終えた後、遠くで波の音がゆっくりと続いていた。
カメラを止めた後もしばらくその場を離れられなかった。
あの日の空の色と海の音は、今でもはっきりと記憶に残っている。
「祈」は、その時間の記録であり、自分の中で最も静かな瞬間を形にした一文字だった。

漢字の意味

一般的な意味

「祈(いのる)」は、「神や天に願う」「幸福や平安を求める」という意味をもつ漢字です。
古代中国の甲骨文字や金文では、「示(しめすへん)」が祭壇・神への供え物を表し、
「斤(おのづくり)」が人の手に持たれた道具、つまり“力を込めて捧げる行為”を象徴していました。

したがって、「祈」は単に“お願いをする”という意味に留まらず、
「人が神聖なものに向かって、誠の心をもって行為を捧げること」を意味します。

字形の構成

  • 偏(へん):「示」
     → 神・天・祭祀・祈りなど、神聖な存在との関係を示す部首。
     → 「神」「礼」「社」などと同じく、神事や心の祈りに関わる文字に多く使われる。
  • 旁(つくり):「斤」
     → 「おの」や「道具」を表し、人の“働きかける力”を意味する。
     → 神への祈りを“行為として実現する”人間の意志を象徴する。

この二つが組み合わさることで、
「祈」は「人の手による誠の行為をもって、天へ思いを捧げる」という構造になります。

精神的・芸術的な意味

「祈」は、外に向けて願う言葉ではなく、
内から生まれる静かな想い・感謝・祈念のかたちを表します。
宗教や宗派を超えて、人が「生きることそのもの」を尊び、
他者や自然、そして宇宙との調和を願う行為が「祈り」です。

書道の文脈では、
筆を取ることそのものが祈りの行為とみなされることがあります。
「祈」という字は、筆を立てる瞬間の集中、線を結ぶ呼吸、
そして最後に筆を離す瞬間の静けさまで、すべてが“祈る姿”として映し出されるのです。

詳細情報

項目内容
作品ベースウッドキャンパス
メイン素材木材、和紙
サイズF30 35.8in(910mm) × 28.6in(727mm)×0.98in(25mm)
使用画材墨汁
作品の仕上げ木製キャンパスの上に、ジェッソで下地処理をし、書道紙(和紙)を貼り、墨汁で描き、仕上げています。
国内外配送対応について・海外出荷対応可能:運送会社に指定が無ければFedExにて出荷
・日本国内の配送:運送会社に指定が無ければヤマト運輸にて出荷
出荷時の梱包について簡易包装や重包装など、ご要望に応じた梱包も対応させていただきますので、詳しくはお問い合わせください。
送料についてアート作品対応運輸を使う、保険をかけるなど、購入者と要相談のうえ決定します。
作品の補償について作品は、販売時の状態そのままでのお引き渡しとなります。美術品保険等のご希望がありましたら、ご相談も承ります。
お支払の方法作品価格+保険料(オプション)+送料が、お支払価格となります。お支払はカード決済がご利用いただけます。

作品証明書が付属します。

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