幸運をもたらす筆跡術
筆跡とは、行動の記録であり、その人の個性や心理的特徴、行動のクセ、さらには他人との相性を見たりと、心の奥底にあるものを浮き彫りにするものです。文字を書く際、無意識に表れる書き方の特性を心理学的に分析し、その人の性格や行動の傾向を読み取る学問を「筆跡学」といい、統計学の中のひとつでもあります。性格は行動に表れ、それは筆跡にも反映されます。たとえば、せっかちな人の文字にはその特徴が現れますし、幸福度や満足度が低い人にも、そうした筆跡の傾向が見られます。
「筆跡術」とは、この筆跡学の特徴を逆手に取り、未来の自分が望む姿に近づくために、文字を書く際に特定の特徴や要素を意図的に加える技法の事を言います。つまり、夢や希望を込めて書くことで、自らの運気を高め、幸運を引き寄せる文字の書き方ともいえます。

ここで紹介する書き方以外にも、「型」などの要素があり、それらを組み合わせることで、一つの文字に複数の運気向上の願いを込めることもでき、とても奥が深く、全てを合わせて筆跡術と言うのですが、ここでは、どのような書き方がどのような幸運をもたらすのか、運気を高める代表的な5つの筆跡をご紹介します。
才能運(サイノウウン)を上げる書き方

横棒の左側を突き出して長く書く書き方は、才能とエネルギーがほとばしり、頭脳明晰な人になるとされています。歴史上の人物の中でも、この書き方をしていた才能型の代表として挙げられるのが聖徳太子です。
日本最古の真筆(※1)であり、国宝にも指定されている「法華義疏(ほっけぎしょ)」というお経も、この特徴的な書き方で記されています。
横棒のはみ出しは才気を象徴し、気力や知力が溢れる人ほど左側が長く突き出すといわれています。そのため、この書き方で文字を書くことで才能運を高めることができるとされ、願いを込めて書くことでさらなる才能の開花が期待できるのです。
※1:真筆とは、代筆ではなく、本人が書いたものと言う意味です。
華麗運(カレイウン)を上げる書き方

華やかな出来事や注目を集める機会に恵まれ、スポットライトを浴びることでやる気が湧く人に多く見られるのが、左方向への払いが通常よりも長い筆跡を持つ人です。
この特徴は、カリスマ性のある企業家や、スター性が求められる歌手・俳優などの芸能人に多く見られます。また、美意識の高い人にもよく見られる筆跡の特徴です。
左払いは、文字を書く途中で生じる線の一部であり、本来であれば適度な長さで止め、次の画へ移るほうがエネルギーの使い方として合理的です。しかし、それを勢いのまま長く伸ばすという筆跡は、それだけ内に秘めたエネルギーが溢れていることを意味します。つまり、この書き方をする人は、内面から放たれるエネルギーの輝きそのものが、人を引きつける大きな要素となり、華麗運を高めるとされています。
健康運(ケンコウウン)を上げる書き方

右や左へ大きく跳ね上げるこの書き方は、大病を克服した人によく見られる筆跡といわれ、健康に対する運勢を高める書き方といわれています。はねの最後まで気を抜かず、力強く書く筆跡は、粘り強く頑固で、困難を乗り越える人に多く見られ、物事をあきらめない「困難克服型」の筆跡とされています。また、文字には上から下へ氣が流れているとされ、この氣をしっかり受け止めることで、健康運が向上すると考えられています。
金運(キンウン)を上げる書き方

四角い空間を持つ漢字では、最初のつなぎ目の部分が開いていて、最終画の横棒でしっかり閉じる書き方が、金運を高めるとされています。なぜなら、私たちの行動に始まりと終わりがあるように、文字にも「起筆」「送筆」「収筆」という順序があり、文字の特徴と日常の行動は常に一致していると考えられるからです。
起筆はお金の入り口を象徴し、お金や情報などが入ってくる場所とされます。一方、収筆はお金の出口と考えられ、しっかり閉じることで流出を防ぐ効果があるといわれている為、お金が貯まる書き方とされています。また、「目」「東」「町」のような四角い空間を持つ漢字を書く際にも、この筆跡術を活用することで、金運を向上させることができるとされています。
無縫運(ムホウウン)を上げる書き方

この筆跡は、並外れた意欲を持つ「意欲型」の筆跡とされ、既存の枠を超えて大きな成功を収める運勢を示します。この筆跡を持つ代表的な人物には、美空ひばり、石原裕次郎、そして歴史上の人物では徳川家康などが挙げられます。
特に、収筆部分を長く下へ伸ばす特徴は、非凡な個性と強い精神的エネルギーが文字に表れている証とされています。そのため、こうした筆跡を持つ人は、目標の達成のためには自らの努力や財産を惜しまない傾向にあり、日常的に人並み以上のことを成し遂げたり、特別な環境に身を置いたりしているため、一般的には「普通ではない」とされる行動にも寛容な視点を持つ人物であることが多いとされています。
このように、非常に非凡な才能を持つ筆跡であり、社会的にも大きな成功を収める可能性が高いといわれています。
まとめ
このように、筆跡術とは過去のデータや情報を整理・分析し、その確率論を基盤とした筆跡学から、有益な情報を導き出し、幸運へと導く文字の書き方をします。書道アーティストである斑(MADARA)は、この筆跡術を用いた書道を20年以上にわたり実践しており、日本初の「筆跡術書道家」として活動しています。
過去には、ある母親から「体が弱く長生きできない」と余命宣告を受けた子どものために、健康運が上がる名前を書いてほしいという依頼が寄せられ、その子の名前に健康への願い、母親の想いを最大限に込めて書き上げ、送り届けました。それから数年が経ち、子どもは宣告された余命を超えて誕生日を迎えることができ、母親は涙ながらに感謝の電話をかけてきました。この出来事をきっかけに、斑の筆跡術による命名書はより広く知られるようになりました。
筆跡術には、日本の歴史のような壮大な要素から、母親の切なる願いのような個人的な想いまで、人間のさまざまな願いが込められています。それは単なる文字の書き方と言うだけではなく、人々の願いや思いを叶える為の「術」になったと言えるのです。